堂々とヒントが開示されていた本 「古書店アゼリアの死体」
主人公は元編集者の相澤真琴。
勤め先の出版社が倒産し、その後トラブルが続く。たまったストレスを海に叫んで発散しようとしたら、「海のバカヤロー!」と叫ばれた仕返しを海がしたのか溺死体が真琴のそばに打ち上げられてくる。
私はコージーミステリーが大好物なので、こういうの大好きです。
若竹七海さんは以前からお名前は聞いてたけど読むのは初めて。
犯人がわかってからも他の謎が残り、そこが少しずつほどけていくのが楽しかったです。
登場人物が少しずつやらかしてうまい具合に絡まりそれがうまいこと隠されてて上手に種明かしされていきました。
読後感は大満足です。
最初の死体は海で見つかったのに、なぜにこのタイトル?と思ったら途中であ、なるほど、と思ったのもまた裏切られ、最後の種明かしを読んで実はタイトルがヒントだったとは、とガビーンとなりました。
「流」読了。近代の台湾、中国、日本。知らなかった…そうだったのか…。
「流」読了 東山彰良著
何年か前に直木賞をとった作品。
主な舞台は台湾、70年代。
日本のお隣なのに全く知らない歴史上事実が多く、自分の無知を恥じた。
とはいえ内容は読みやすく、笑いどころも満載、サービス精神多めの青春ミステリー小説でありました。
破天荒な主人公が環境や友人や恋人や家族の歴史に翻弄されながら七転八倒。
冒頭は中国山東地方の何もない荒れ地。
祖父が戦争時に大量虐殺した村に26歳の主人公が訪れ、便意を催しタクシーの運転手にトイレは無いかと尋ねます。
タクシーが指さした先はただの塀。
やむなく先人達の残した作品群(便)のそばでしゃがむ主人公。
すると突然塀の上から
「お前は何をしているんだ」
と見知らぬ老人に話しかけられます。
驚いて思わず先人達の遺物に尻餅をつきそうになる主人公。(かろうじてセーフ)
ここには祖父が虐殺した人達の家族がいるかもしれないので孫だとは絶対バレないようにしなければならない。
ちょっと緊張感のある空気になるところで、
舞台が高校時代にまで遡ります。
そこでは、基本真面目なんだけど環境が荒っぽいからやむなく荒っぽく逞しく生き続ける若者の姿が描かれます。
ちょっとやらかしただけでぶん殴る祖母と両親。祖父のお気に入りの血の繋がらない叔父。血は繋がっているが嘘ばかりついて頼りにならない叔父。鼻っ柱が強い叔母。地元の不良と喧嘩に明け暮れる毎日。
祖父には可愛がられていたが、(でもやはり躾はぶん殴る)その祖父がある日何者かに殺される。
ショックを受ける主人公。
犯人を探すも見つからず。
モヤモヤを抱えたまま数年。その間も色々な出来事が起こる。死者の時間は止まるが生者の時間はどんどん進む。
喧嘩、幽霊騒ぎ、恋、やんちゃな友人に巻き込まれヤクザに追われたり。
70年代の台湾の知らないはずの熱気が伝わってくる。
物語はあちこちに触手をのばしながら根底では祖父殺しの犯人探しが少しずつ進行していく。
途中からは一気読み。
読後感、大満足。
この人、読みやすくて面白い。
他の作品も読んでみよう。
それにしても台湾の中も複雑なんだなぁ。
全然知らなかった…。
学校では近代史は3学期の最後の超高速やっつけ授業で全然わかんなかったけど、こりゃ教える方も複雑過ぎてやっつけになっちゃうのはやむを得ないのかもねぇ。
こないだ読んだ「らんたん」「シャーロックホームズ対伊藤博文」に続いて個人的近代史探訪といったところでしょうか。
「らんたん」読了。痛快!猪突猛進明るいブルドーザー道先生
「らんたん」柚木麻子著
2023年10月はじめ頃読了。
明治大正昭和初期の有名人が多数出てきて楽しかったです。
あらすじは、恵泉女学園の創設者、河井道さんの生涯。
恵泉女学園も河井道さんも知らなかったけど、
柚木麻子さんが好きなので、図書館で手にとってパラパラしていたら話に引き込まれてしまって借りました。
どんな有名人がでてきたかというと、新渡戸稲造、有島武郎、野口英世、徳富蘆花、村岡花子、太宰治、津田梅子、ロックフェラー、その他大勢。
どんだけ「道先生」という人物は精力的に活動した人だったんだろう。
恵泉女学園に中高と通った作者による、膨大な資料と取材の末に書き上げられた今作。
どこまで史実でどこから創作かわからないが、
特に好きなのは、
恵泉女学園にどこぞの伯爵から贈られたワニが「イナゾウ」と名付けられ(道先生の恩師の新渡戸稲造から命名)経堂の商店街を生徒さん達がヒモをつけて散歩していたところ通りかかった太宰治が二度見して通り過ぎたところ。
全編通して明るく力強い内容なんだけど、この場面は漫画的で微笑ましく呑気で好きでした。
話の本筋は、女性の地位が低く勉学もままらなかった時代に、真っ直ぐに自分のやりたい事をやっていく、それは時には留学であったり、後輩女性を導く事であったり、ひいては学校設立であったり、
その根底にある思想は常に「性別も国籍も地位も年齢も関係なく人間はみな平等、それぞれの中の灯りを広くシェアしていく事が大事」というもの。
日本の現状は行灯、足元を照らすだけなのでまわりがよく見えない、西洋はらんたん、まわりに光をシェアできる。若き日の道先生が留学先のアメリカで、式典の際に学園の先輩から後輩へ手渡されるらんたんが物語全編に渡ってのモチーフになっています。
素直にまっすぐに生きる事はとても難しいから、
物語の中の道先生の生き様が眩しくて清々しかったです。
それだけじゃなく、道先生はじめまわりの人々の悩みも深く描き出しているから人間臭くてまた良かったんだな。
晩年の道先生が有島武郎の幻をみる場面とか、道先生のシスターフッド(同性で助け合う間柄)のゆりさんの苦悩とか、火の玉みたいに生きるがゆえの悩みが浮かび上がってきて、そうか、そうだよな、人はこれでよしと行動してもやはり反対の道もあったのではないかと悩むものなのだよな、と思ってみたり。
ふぅ、
これで思った事は大体書けたかな。
また思い出したら書き足そう。
ブログにする時、タイトル何にしようかな〜と考えたら、女性の学びの道をカラカラと笑いながらブルドーザーみたいに開拓していく美人先生の図が浮かんだので、言葉にしてみました。
頭の中が怪しくなるほど面白かった「シャーロック・ホームズ対伊藤博文」
読書の記録を残そうとはてなブログを始めたら
特別お題「わたしがブログを書く理由」
とありましたので、参加してみます。
といっても「わたしがブログを書く理由」は「読書の記録を残そうと思ったから」なので、ここで本題は終わってしまうのですが・・。
とりあえず図書館で借りた
の感想を書いて早く返さなきゃいけないので、書きます。
著者は松岡圭佑さん。
「万能鑑定士Q」シリーズで有名な作家さんです。
何か面白い本はあるかな~、と図書館をうろうろしていた時に
タイトルで惹かれ、作者名を見て、これは確実に面白いと思い、読み始めました。
「万能鑑定士Q」シリーズがとても面白かったんですよね~。
1巻の冒頭で偽札のせいで日本の円が紙切れ同然になってしまったシーンから始まり、
ひー、大変だ!と夢中になって読み始めた記憶があります。
主要登場人物たちもとても魅力的で、
シリーズほぼ全て読みました。
この「シャーロック・ホームズ対伊藤博文」
も面白かったです!
ホームズが命を失ったとされた「最後の事件」から
復活を遂げた「空き家の冒険」までの
空白の時間で実はホームズは日本に来ていて
伊藤博文と行動を共にし、
日本とロシアの「あわや戦争か」という緊迫のあれこれを
解決する、というお話でした。
「空き家の冒険」は未読なので、読みたくなりました。
ネットで軽く調べたら、この「シャーロック・ホームズ対伊藤博文」の最後の
ワトソンと再会する場面が「空き家の冒険」のシーンそっくりそのままみたいで、
本家の文章のシチュエーションの中にうまーく創作エピソードを破綻なくしかも面白く
挟み込んだんだな~、
と思い、とても楽しめました。
伊藤博文の女好きのエピソードとかがいい感じに挟み込まれていて
にやにやしちゃいました。
ていうかホームズが実際にいたのかと思わせるほどの
史実との溶け込みぶり・・。
もともと怪しい作りの自分の脳みそがますます怪しくなりそうです。