「流」読了。近代の台湾、中国、日本。知らなかった…そうだったのか…。

「流」読了 東山彰良

 

何年か前に直木賞をとった作品。

主な舞台は台湾、70年代。

日本のお隣なのに全く知らない歴史上事実が多く、自分の無知を恥じた。

 

とはいえ内容は読みやすく、笑いどころも満載、サービス精神多めの青春ミステリー小説でありました。

 

破天荒な主人公が環境や友人や恋人や家族の歴史に翻弄されながら七転八倒

 

冒頭は中国山東地方の何もない荒れ地。

祖父が戦争時に大量虐殺した村に26歳の主人公が訪れ、便意を催しタクシーの運転手にトイレは無いかと尋ねます。

 

タクシーが指さした先はただの塀。

やむなく先人達の残した作品群(便)のそばでしゃがむ主人公。

すると突然塀の上から

「お前は何をしているんだ」

と見知らぬ老人に話しかけられます。

驚いて思わず先人達の遺物に尻餅をつきそうになる主人公。(かろうじてセーフ)

 

ここには祖父が虐殺した人達の家族がいるかもしれないので孫だとは絶対バレないようにしなければならない。

 

ちょっと緊張感のある空気になるところで、

舞台が高校時代にまで遡ります。

 

そこでは、基本真面目なんだけど環境が荒っぽいからやむなく荒っぽく逞しく生き続ける若者の姿が描かれます。

 

ちょっとやらかしただけでぶん殴る祖母と両親。祖父のお気に入りの血の繋がらない叔父。血は繋がっているが嘘ばかりついて頼りにならない叔父。鼻っ柱が強い叔母。地元の不良と喧嘩に明け暮れる毎日。

 

祖父には可愛がられていたが、(でもやはり躾はぶん殴る)その祖父がある日何者かに殺される。

ショックを受ける主人公。

 

犯人を探すも見つからず。

 

モヤモヤを抱えたまま数年。その間も色々な出来事が起こる。死者の時間は止まるが生者の時間はどんどん進む。

 

喧嘩、幽霊騒ぎ、恋、やんちゃな友人に巻き込まれヤクザに追われたり。

 

70年代の台湾の知らないはずの熱気が伝わってくる。

 

物語はあちこちに触手をのばしながら根底では祖父殺しの犯人探しが少しずつ進行していく。

 

途中からは一気読み。

 

読後感、大満足。

 

この人、読みやすくて面白い。

他の作品も読んでみよう。

 

それにしても台湾の中も複雑なんだなぁ。

全然知らなかった…。

学校では近代史は3学期の最後の超高速やっつけ授業で全然わかんなかったけど、こりゃ教える方も複雑過ぎてやっつけになっちゃうのはやむを得ないのかもねぇ。

 

こないだ読んだ「らんたん」「シャーロックホームズ対伊藤博文」に続いて個人的近代史探訪といったところでしょうか。